国民年金について改めて考える

社会経済

高齢化社会の進展に伴い、老後資金をどの程度用意すればよいのかは、常に話題となっています。

実際に60歳を超え、70歳が近づいてくると、「これで本当に大丈夫なのだろうか」「もっと何か準備をしておくべきだったのではないか」といった不安に駆られることは、決して少なくありません。

心理面での変化を振り返ると、50代の頃までは運用を重視し、損益の分岐点を意識しながら物事を判断していました。

しかし60代を超える頃になると、損益よりも「安心」を求める気持ちの方が強くなってきました。

その安心は、やがて終身で保障される仕組みへと意識が向かうことにつながります。

死ぬまで毎月、十分なお金が入ってくると考えられれば、これほど心強いものはありません。

国民年金

私たちには国民年金という公的な終身保険制度があり、現在は65歳から受給することができます。

国民年金だけでは、決して十分に安心できる保障とは言えません。しかし、誰もが加入しているこの「終身年金保険」という仕組みについて、あらためて考えてみたいと思います。

個人事業主が65歳以降にもらえるのが、国民年金(老齢基礎年金)です。

国民年金は20歳から納付資格があり、60歳までの納付期間が標準です。

この期間内に満額を満たせなかった人のために、任意加入制度によって65歳までの納付期間の延長(最大480ヶ月まで)が認められています。

40年間(480ヶ月)分をすべて納めると、満額の年金となります。

現在、この満額を迎えた人(昭和31年4月1日以前生まれ)が、65歳からの給付で貰える金額は、831,700円/年(月額 69,308円)です(令和7年度価額)。

繰下げ受給

☝🏼もっと給付額を増やすためには、繰下げ受給があります。

👉🏼 70歳から受給開始にすると、42%増額の 1,181,014円/年(月額 約98,417円)になります。

👉🏼 最長、75歳まで繰り下げができて、84%増額の 1,530,328円/年(月額 約127,527円)になります。

受給開始年齢受給額(月額)
65歳69,308円
70歳98,417円
75歳127,527円

40~50代の頃はこの受給開始に関して、損益分岐点などを考慮したりして、70歳からかなと考えていましたが、実際に60歳を超えて65歳も超えて、70歳が近づいてくると75歳で良いのではと考えるようになりました。

長生きリスク

年齢を重ねるにつれて、やはり気がかりになるのは「長生きリスク」です。

かつては長生きすること自体が幸福の象徴のように捉えられていましたが、今では長生きは「備えておくべきリスク」として意識される時代になりました。

今の生活が困っていないのならできるだけ将来に受け取れる金額を増やしたいと考えるようになります。

損得よりも、将来への不安をどれだけ軽減できるかに重きが置かれるようになってきています。

👇🏼 国民年金は終身年金保険です。

一度受給を開始すれば、亡くなるその日まで年金が支給される仕組みは、計り知れない安心感をもたらしてくれます。

😔しかし、その価値は若い頃にはなかなか実感できなかったものでもあります。

投資としての終身保険

国民年金の保険料は、時代とともに値上がりしてきました。1980年代には月額数千円だった保険料も、現在は月額17,000円前後となっています。

この40年間(480ヶ月)の変遷を平均すると、累計の納付総額は「約700万円前後」になります。これが、私たちが国民年金という終身保険に投資した金額です。

65歳から満額(年額 約83万円)を受給した場合、約8.4年で元が取れます。つまり投資の面で考えると、74歳を超えれば、それ以降はすべて「プラスアルファ」の純利益となります。

これは民間の金融商品と比較しても、極めて利回りの良い「破格の商品」であることは間違いありません(国の保障制度として十分かという議論は別として、ですが)。

しかし、今の時代、74歳はまだ現役の方も多いでしょう。ですから、ここで検討したいのが、「75歳までの繰下げ」という選択です。

受給開始を75歳まで遅らせると、受給額は84%増額され、年額は約153万円にまで膨らみます。

  • 受給開始:75歳
  • 受取額: 月額 約12.7万円(年額 約153万円)
  • 回収スピード: 4.5年で元本(700万円)を回収
  • 損益分岐点: 79歳半

75歳から受給を開始し、80歳を迎える頃には、すでに払った金額以上の年金を受け取っている計算になります。

長生きを前提に考えるのであれば、国民年金の繰下げ受給は、「安心を買うための選択肢」として、非常に現実的な投資だと言えるでしょう。

大切なのは安心のために

75歳以降に、この「月々約13万円が一生続く」という事実は、損得を超えた安心の「長生き保険」になります。

40代や50代の頃は、「何歳で死んだら損か」という損益分岐点ばかりが気になったものです。しかし、実際に60代を過ぎ、70代が視野に入ってくると、考え方は変わります。

一番の心配事は「いつまで続くかわからない人生に対して、どのくらいのお金を備えておけばよいのか?」です。

しかし、国の終身年金は、死ぬその日まで支払われ続けます。

75歳まで繰り下げて「月額を最大化」しておくことは、単なる投資の回収ではなく、「将来の自分に対する最大の安心」を買う行為なのです。

なお、会社員の場合は老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も支給されますが、ここでは老齢基礎年金のみを対象としました。
また、厚生年金を含めて繰下げ受給を行うと、受給額の増加に伴い課税所得がかなり増えることが予想されます。
その結果、所得税・住民税の負担が増えるほか、後期高齢者医療保険料や介護保険料の自己負担割合が上がることもあるため、事前により詳しくシミュレーションを行うことが重要です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました